東京高等裁判所 昭和41年(行ケ)162号・昭41年(行ケ)161号・昭41年(行ケ)160号 判決
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〔判決理由〕(審決を取消すべき事由の有無)
二 原告は、審決にはその主張の点に判断を誤つた違法があると主張するけれども、その主張は理由がない。
(二) 本件考案と第一引例との比較について。
第一引例の実用新案公報によれば、第一引例の子供用ズボンは、伸縮性の大きいメリヤス生地を用い腰部に長方形の後まちを縫綴した構成により、身体の形状によく適合し、部屋着遊戯服として身体の運動を制限することがなく非常に着心地がよい、という目的および作用効果を狙いの一つとするものであることが認められ、一方、本件実用新案公報によれば、本件考案においても、激しく演舞しても着崩れせず、いつも身体にぴつたり密着し、演舞者の美しい曲線を表現することができ、舞踊者は快適に舞いうるのみならず観客も優美な舞姿を観賞しうるという目的および作用効果は(後記のとおり、筒編状に縫目なしに編成した長靴下状筒袋を用いたために、縫目が殆ど見えない構成となつたことによる点を一応別にすれば)、本件考案の要旨のうち、真半分に裁断した後方開口縁に臀当(まち)を介装して縫合した腰部の構造により、身体の形状によく適合することによつてもたらされるものであることを認めるに足り(本件考案においては材料について特定するところがないが、この種バレータイツに伸縮性の大きいメリヤス編みの合成繊維等を用いることが多いことは周知のとおりであるから、右の後まちを縫合する構成とあいまつて本件バレータイツが身体によく密着することは、容易に理解できるところであるにしても)、これらの点において本件考案と第一引例との間に格別の差異があるとはいえない。第一引例が、いわゆるカット・アンド・ソーン方式のものであるため、「筒袋A、Bの腰部の穿口より股まで腰部を真半分に裁断する」という構成を有しないことは、原告主張のとおりであるが、右のように一対の筒袋の穿口から股まで腰部を真半分に裁断した状態のものは、第一引例における「足部、脚部および腰部を一連に左右対称に編成した生地6、6の各々を股部から下の両側縁で縫合して筒状に形成し」た状態のものと――後者が股部から下の両側縁に縫目があることを除いて――構造上一致することは明らかであり、ただ両者の用いる素材の差異にもとづき、本件考案が一たん腰部穿口まで編成した筒袋を穿口から股まで真半分に裁断したのに対し、第一引例が股部から下のみ両側縁を縫合し股から上は縫合しないでおく方法を用いたにすぎない。そして、一対の円筒長靴下状に縫目なしに編成したものを素材としてバレータイツを調製することが、本件出願前周知の技術であることは原告の争わないところであるから、この周知技術により作られる一対の筒編み長靴下状のものを出発点とし、これに加工を施して、第一引例にみられるような後腰部のみにまちをを入れたバレータイツとしたい場合に、長靴下状筒袋を穿口から股まで腰部を真半分に裁断して前記構造のものとするようなことは、当業者にとりきわめて容易に想到しうるところであつて、原告のいう本件考案と第一引例との技術的課題の相違なるものも、そのために格別の考案力を必要とする程のものとは考えられない。
(二) 本件考案と第二引例との比較について。
審決が第二引例を引用した趣旨は、その股部より下方の構造を本件考案と対比することにあるのであるから、原告主張のように、その引用部分以外の股部より上方の構造について両者を対比し、その構造の差異やそれに由来する作用効果の差異を指摘しても意味はなく、また、そのような本件考案の作用効果は明細書になんら記載されていないことは前出甲第二号証により明らかであるから、その点の主張は採用できない。そして、前記のとおり、一対の筒編み長靴下状のものからバレータイツを調製することは周知に属し、第二引例もその一つであつて、このようなバレータイツは、足部、脚部に縫い目がないことは明らかであり、したがつて、全体として縫い目が少ないので外観および使用感に優れる特長を有することは容易に理解しうるところであるから、本件考案のものが、股部から下に縫い目がない点で前記第一引例と相違し、全体として縫い目が少なく外観および使用感において優れているとしても、そのような点に新規な考案の存在を認めることはできない。
(三) 第一引例と第二引例との結合について。
第一引例のメリヤス製子供用ズボンと、本件考案や第二引例のバレータイツとが、物品として、ともに、身体によく適合し激しい運動を制限することなく着崩れしないことを必要とする下半身用被服であつて、両者ともメリヤス工業の分野に属し、同一業者により製造されることがあることは顕著な事実であるから、第二引例の股部から上方に第一引例の股部から上方の構造に関する考案を適用するという着想が当業者に容易に生じえないとする理由はなく、この点の審決の判断を不当であるとする原告の主張は採用できない。
(むすび)
三 以上のとおり、その主張の点に判断の誤りがあるとして本件各審決の取消しを求める原告の請求は理由がないから、これを棄却する。(三宅正雄 杉山克彦 楠賢二)